手をのばす
ある金曜日、週末ということで私たちは食事ではなく、飲みに出かけることにした。

とりあえず飲みやすそうなワインをオーダーし、2杯、3杯目と進んだ頃、沙耶が目の周りを赤くしながらこんなことを口にした。


「あのね、ちょっと恥ずかしいんだけれど・・・江崎さんにお願いがあるの」


私はグラスを置いて

「え?何?」

と沙耶を見た。


「うーん、ちょっと恥ずかしいな、やっぱり」

「何?言ってよ」

「うんと、うーん」


上目遣いで私の方をうかがったり、目をそらしたり。

そんな沙耶をかわいいなあと酔った頭でぼんやり考えていた。

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