手をのばす
やがてもじもじとうつむきながら沙耶は

「あの・・・あのね嫌じゃなかったらでいいんだけどね・・・・・・由紀子って呼んでいい?」


本当にためらいがちに、私の下の名前を口にした。



突然の申し出に私は驚きながらも

「もちろん!私もそうするね」


と明るく言うと、沙耶は初めて言葉を交わした時のような輝く笑顔を見せてくれた。


「嬉しい。ずっとそうしたかったの。ああよかったあ」

そう言って胸に手を当てながら、彼女は椅子に深くもたれかかった。
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