手をのばす
沙耶と色んな話をして、彼女は私ととても似た人間だと分かっていたのに。


だから欲しかったものは、きっと同じであったのに。


それに気づいていながら、何もしなかった。

相変わらず受身だった。


「どうしたの?」沙耶が心配そうに覗きこんできた。


「ううんなんでもない」


少し落ちそうになった気持ちを隠して、私は笑顔でそう答えながらワインを口に含んだ。


さっきまでより、ちょっと渋い味がした。


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