手をのばす
次の日、朝喫茶店の前を通った。

今日、沢渡は店に出ているのだろうか。

休みだったらいいのに。



何となく、本当に何となく沙耶には沢渡の話をしなかった。

高校の同級生がいる店に通っていると知られるのが、嫌だったのかもしれない。



それは少しだけ、沙耶を裏切っているような気持ちだから?

過去に媚びているように思われそうだから?


店の前で立ち止まりそうになった自分を制して、重い足取りで会社に向かった。
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