手をのばす
その日の仕事が終わった後、私は沙耶とすぐにその喫茶店へ向かった。

「へえこんなところあったんだ。気づかなかった!ステキなお店ね。緑がいっぱい」

席に座るなり、沙耶は落ち着きなく店内を見渡しながらそう言った。

「もう、由紀子一人でこんなところきててずるいんだから。これからは私も来ようっと。いいよね?」

メニューを見ながら、沙耶はとても機嫌がよかった。

私は「そうね」とか「うん」とか答えながら、とても居心地が悪かった。

今日はまだ沢渡と顔を合わせていない。


もしかしたら休み?


だといいのに。

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