手をのばす
それからしばらくして、決算前となり急に仕事が忙しくなった。


休みは死守できていたので、週末は沙耶といつもどおり買い物にでかけたりはしていたものの、平日は残業残業。

帰りの時間が沙耶とすっかりずれてしまっていた。


沙耶の仕事が少し早く片付いたときにはよく

「大変そうね、手伝おっか」

と声をかけてくれたけれど、

「大丈夫。大丈夫。もう少しで終わるから」

と笑って沙耶に返した。


自分の請け負った分くらい自分の力でやりたかった。

沙耶は一応後輩だし、私は入社3年目なのだから、というちょっとした意地もあった。


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