手をのばす
ともだちの定義
沢渡に挨拶をして店を出てからも、私の気持ちはどこかざわついていた。


沙耶に、私以外の別の友達がいる?

本当だろうか?


私と同様、これまで誰とも親しくなれなくて・・・・・・。

私たちはお互い初めての親友だったはず。


「沙耶に友達がいるとしたら」



そのことに、どうしてこんなに傷ついているのだろう?


沙耶に私以外の友達がいたっていいはずなのに。

むしろ喜ばしいことだと思う。

お互い望む自分へと変わっている証拠なのだから。



それは分かっているのに、何度自分にいいことなんだ、と言い聞かせても、やっぱり私はどこかで落ち込んでいる。


気分を変えようにも、もうどこへも寄る場所がない。


私は仕方なく暗い気持ちでとぼとぼとアパートへと帰った。
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