手をのばす
あの夜、アパートまで送ってくれた沢渡は、

「そうだ、よかったら携帯番号教えてよ」

と私にとって意外な言葉を発した。

男性にそんなことを言われたのは初めてだったので、一瞬固まってしまった。


沢渡はにこやかに


「働いてりゃさ、いろいろあるよね。俺もおんなじ。そういうときは話聞くし!同郷のよしみでしょ、あ、俺の愚痴も時々聞いてくれる?」

と言ってポケットから携帯電話を取り出した。



そして私たちは、電話番号とメールアドレスを交換し合うことになった。
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