手をのばす
それから時々携帯にメールが入る。


「終わった～今日は忙しかったよ！」とか

「江崎さんは元気？」

とか内容はとても他愛のないものだったけれど、そのたびに胸の奥があたたかくなって、力をもらえる。


それに私も

「お疲れさま～！私もお疲れだよ」と短い文章を返す。

こんな軽いメールでも、私は一文字一文字を大事に打った。


本当は、感謝の気持ちをもっと伝えたい。

でも言葉にするのはためらわれた。

そんなのは陳腐になりそうだし、重くなってしまうのもイヤだった。

だから沢渡に伝わることはなくても、そのあっさりした文字のひとつひとつに心をこめる。

「沢渡くんて、付き合っている女の人っていないのかな･･･」

携帯の画面を見ながら、ふっとそんな考えがよぎる。




「由紀子用意できた？そろそろ行こうよ」


沙耶の声を合図に、私は携帯電話の画面をパチンと閉じ、更衣室を後にした。
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