手をのばす
沙耶はとても言いにくそうに口元をすぼめたりしながら、やがて言った。


「友達が、一泊で旅行に行きたいっていうんだけど・・・突然二人はどうかなと思って・・・由紀子と一緒なら安心だし、楽しいし・・・」



心がすっと冷えるのを感じた。

友達・・・・・・ね。

私以外の。


とうとう沙耶からその言葉を聞いてしまった。

聞きたかったけれど、聞きたくなかった。


私は少し考えて、答えた。

「そう。でも私は知らない人だろうし、一緒に行くのはちょっとつらいな。ごめん。無理」

冷めたままの心をひきずって、私の言葉は尖った。


「そうだよね、うんわかった」

沙耶はあっさり引き下がった。

それはますます私を冷めさせた。

親戚の披露宴の話では、もう少し強く誘ってくれたのに・・・。

断ったら、機嫌が悪くなるほどだったのに。

未練がましくそんなことを考えてしまい、自分が情けなくなった。


沙耶にとって、私はもうそれほど必要でない存在なの?


目の前の沙耶は誘いを断られても、特に気にする様子もない。

以前よりも、どこか漂々として見える。


私は一人取り残された気持ちになった。


半分溶けてしまったデザートのアイスクリームを、私は睨むように見つめていた。
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