『ありがとう』と言われる日まで。



一番後ろの席である自分からは、前の方の席に座る彼女の後ろ姿しか見えない。


どうして、こんなにも彼女の視線、存在が気になるのだろう。


その気になる理由というものは、すぐにわかった。



休み時間。


彼女の姿を盗み見る。


彼女は自分の席に座っていて、机にノートだろうか。


それを開いて、シャーペンを握っている。


スラスラと走るシャーペン。


その動きは不規則で字を書いているようには到底思えなかった。



「どうした、榊原?」



前の席に座る山本(ヤマモト)が話しかけてきた。



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