笑わない王様
「吉岡さん、入ってきてー」
ついに出番が来た。
自然に笑顔で、きさくに…。
よし!
―ガラガラガラ
教室に入った途端に感じた空気。
それは私が思ってたよりも軽かった。
「――から来た吉岡ゆずです。十年前まではこっちに住んでたことがあります、よろしく」
当たり障りのない自己紹介をして笑顔を作る。
”絶対王政”
あの空気を味わったからきっとみんな冷たい人だと思ってた。
だけど今、私の目の前にいる人たちはみんな冷たい人には見えなかった。
「はい皆拍手~」
先生がそういうと、みんなが拍手をしてくれた。
みんながみんな冷たい人じゃなくてよかった…。
「じゃあ吉岡さんは、一番後ろのあの空いてる席について」
「あの…どっちですか?」
先生が言っている場所には、二つの空席があった。