笑わない王様
「わからないことあったらなんでも聞いてね。移動教室とか案内する」
本当に…深月って天使…?
「ありがと、ほんと。なんか皆に避けられてるような気がしてたんだ…」
「え?あ…。気のせいだよ!そんなの」
言い方に少しの疑問を抱いたけど、深月の笑顔を見たらそんなものどこかへ吹き飛んだ。
「あっ」
ふと私は横の席の人の存在を思い出した。
”あいつ”って、誰のことなんだろう?
「ねえ深月。私の左横の席の人って、誰なの?」
そう聞いた瞬間、深月の顔が強ばったように見えた。
え、なになに?
そんなに怖い存在の人なの…?
「…萩原…さんよ」
「萩原?」
あまりピンと来ない名前。
女の子か男の子かもわからない。
「ねえそれって女の子?」
「違う違う。萩原なぎさっていう男」
なぎさって……
「なぎ…?」