笑わない王様
私の中の何かがぷっつんと切れた。
「…っ誰がブスだ!!なにが萩原様だ!ふざけるのもいい加減にしてくれる!?なに王様って!なに絶対王政って!意味わかんないだけど!!」
ここまで溜まっていた疑問と怒りと、何かを失ってしまった悲しみが一気に押し寄せてきた。
私はずんずんとなぎに詰め寄り、ネクタイを引っ張った。
「何にそんなに怒ってるのかわかんないけど、馬鹿げたこと言うのやめてくれる?なぎはなぎでしょ。私の目には王様には映らない」
そうよ。
何が王様よ。
萩原様?
なんの宗教だよ。
私は受け入れない。
「これ以上変なこと言うならもう二度と話しかけない」
朝のなぎの怖さを知っていたけど、私は怒りが勝って反発せずにはいられなかった。
なぎは私から目を離さず、私たちは数秒見つめあっていた。
いいや、性格には睨み合っていた。
するとなぎは突然、ハッと軽く笑った。
そして私の顔に手を近づけ…
「なんもふざけてねーよ。これが現実なんだよ。話しかけないとかどうでもいい。勝手にすれば?」
私のリボンを引っ張って、目を逸らさずそう言ったーー…