笑わない王様
「風(ふう)ちゃん、そんな事したらダメでしょうがー」
私に”嫌い”と言ったときとは全く真逆の、優しい声で釣り眉女をなだめる。
「碧!だってこの女!うざいじゃん!」
「うんうん、うざいよね」
釣り眉女に同調する碧くん。
やっぱりこの男…!
「だからって、女の子が暴力はダメだよ」
「でも…」
「しつこいよ風ちゃん」
さっきとは違う低い声で冷たいことを言う碧くん。
釣り眉女はそれ以上何も言えなくなって、口を閉じた。
「……行こうっ」
他にいた女の子にそう声をかけて、釣り眉女はどこかへいった。
なんだったんだ…。
「大丈夫?ゆずちゃん」
碧くんはうさんくさい笑顔を振りまいて、私の頬に触れようとした。
私はすかさずその手を振り払う。