笑わない王様
面影
―――放課後。
深月と最寄りの駅まで一緒に帰ることになった。
「あ、そうだゆず!連絡先交換しとこうよっ」
私より一歩前を歩いていた深月がくるりと振り返り、そう提案した。
「友達の連絡先は知っとかないと、不便だし」
深月のこういう優しい一言に私は嬉しくなる。
「そうだね!携帯携帯…」
私はブレザーのポケットに入れてた携帯を出そうとする。
が…
「あれ…?」
「ん?どうしたの?」
駅の前まで来てようやく携帯の存在がないことに気づいた。
「ない!」
「え?」
「携帯…学校かも」
「忘れちゃったの!?」
「たぶん…ごめん。先に帰ってて」
何やってんだろう私~!
私はポカーンと口を開けている深月を残し、慌てて今来た道を引き返した。