笑わない王様


振り向くと、ポケットに手を突っ込んでだるそうに扉にもたれてるなぎがいた。



「…なにも…」


朝のこともあり、私はもうなぎに関わるべきじゃないと思っていた。


きっとなぎもそれを望んでいるから。



私は携帯をとって、今度はちゃんとブレザーのポケットにしまった。



「…じゃあ」


そっけなくなぎの横を通る。


これでイイんだ。

もう昔とは違う。


私となぎが絶対に仲良くしなきゃいけないなんてこともない。


これで――…



「おい、なにその傷」


教室を出ようとした瞬間、私はなぎに手首を掴まれた。



「えっ」


予想外のことで、私は立ち止まる。



「どうしたって聞いてんの」


なぎの顔は真剣で、私の目をじっと見ている。



< 36 / 47 >

この作品をシェア

pagetop