笑わない王様
振り向くと、ポケットに手を突っ込んでだるそうに扉にもたれてるなぎがいた。
「…なにも…」
朝のこともあり、私はもうなぎに関わるべきじゃないと思っていた。
きっとなぎもそれを望んでいるから。
私は携帯をとって、今度はちゃんとブレザーのポケットにしまった。
「…じゃあ」
そっけなくなぎの横を通る。
これでイイんだ。
もう昔とは違う。
私となぎが絶対に仲良くしなきゃいけないなんてこともない。
これで――…
「おい、なにその傷」
教室を出ようとした瞬間、私はなぎに手首を掴まれた。
「えっ」
予想外のことで、私は立ち止まる。
「どうしたって聞いてんの」
なぎの顔は真剣で、私の目をじっと見ている。