笑わない王様
「どうしたって…」
理科室へ行くまでに起きた出来事を思い出す。
意味わかんない女に絡まれて、勝手に誤解されてつきとばされて…。
それも全部、なぎの友達なんでしょう?
私は手首を掴んでいるなぎの手を離して言った。
「なぎの事を大切に思ってる友達に誤解されて突き飛ばされたの」
考えただけでも腹が立つ。
私はただ、普通に過ごしたかった。
転校してきて不安だけど、それなりにみんなと仲良くして、なんの問題もなく過ごしたかった。
久々になぎにも会って、昔みたいに仲良くしたかった。
ただそれだけだったのに…。
「これがなぎのしたかったことでしょう?」
同じ人間なのに。
同じ年齢なのに。
強者と弱者の区別をつけて、強者は弱者をいたぶる。
「よかったね。大嫌いな私に戒めつけれて」
精一杯の嫌味だ。
嫌味を言ってやってるのに、なぎは反抗しない。
私はなんだか、泣きそうになった。