笑わない王様


「俺は別に、お前の顔に傷を付けることを望んでたわけじゃねーよ」


「でも結果そうじゃない。これがなぎが生んだ成果だよ」


みんながなぎに怯え生活して、

なぎの仲間は人を平気で傷つける。



これが、なぎがしたかったことじゃない。


なぎが作り上げたものなんでしょう?



「ゆず…」


か細い声で、なぎが私の名前を呼んだ。


「え?」



ふいになぎの手が私の頬を触れる。

冷たかった。



「……」



なぎはなにも言わない。

ただ、私の頬に触れて、傷を見て、黙っている。



”離して”


そう言ってやろうと思った。


だけど…



なぎが私を傷ついた目で見るから。そんな事言えなかった。


なんで…そんな目をしてるの?


なぎは…王様なんじゃないの…?



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