笑わない王様


初めて知った真相。

なぎが夜遅くに家に来ていたこと。

なぎが……私に手紙をかいていたこと。


私は部屋に入るとすぐに封を開けた。


そこには、いびつながらもしっかりと、一生懸命に書かれた文字が並べられていた。




――――――――――――――-――――

ゆずへ。


さっき、おとなりのおばさんがゆずがひっこすという話をしていました。

ほんとうですか?


ぼくは何もきいていないから、わからないけど

ぼくは、ゆずが好きだから

ゆずが1ばんたいせつだから、はなれてほしくないです。


ゆずはぼくをたすけてくれました。

ゆずまで、ぼくのことキライになったの?


口では言えないから、もじにしました。

おへんじ、ください。


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震えた線で、だけど大きく書かれてどうしても伝えたかったのだと思い知らされた。



「なぎ……っ」


小さい頃のなぎの顔が浮かぶ。

大きな瞳を、毎日不安でいっぱいにして、私がいないとこの子は消えちゃうんじゃないかって思ってた。


思ってたのに…。



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