笑わない王様
私が昔ここに住んでたとき、とても仲の良かったなぎさ。
印象的な瞳でわかった。
「なぎ…さ…だよね?」
確信は持っていたけど、あまりの豹変っぷりに恐る恐る聞いてみる。
だけどなぎからの答えはない。
「私、ゆずだけど…覚えてる?昔一緒に――…」
「だったらなんだよ」
返ってきた答えは予想してたよりもあっさりで、冷たかった。
私の知ってるなぎは…こんな人じゃない。
静かで優しくて、……そして人を傷つけたりはしない。
「ねぇなぎ。どうしちゃったの?なぎが人を殴ろうとするなんて…」
「殴っちゃいけねーの?」
恐ろしい言葉を平気で言うなぎは、やっぱり変わってしまった。
「いけねーのって……当たり前じゃん!人を傷つけるなんてっ」
「じゃあ俺を裏切ったお前は、どうなんだよ」
なぎが私をさげすむような目で見る。
思わず体が硬直した。
…裏切ったって……なんのこと?