【短編】失恋した次の瞬間には壁ドンされてました。
「……まあ、うん。どっちかと言えば」

いつから毒されていたのだろう。
そんなのもう分からない。

「やった、俺の勝ち」

まだ前の恋から、一週間も経っていない。
これだけの想いをぶつけられれば、心が動かないわけがない。

「えっ、やだ。負けたくない」
「じゃあ、ちゃんと好きって言ってよ」
「えっ」
「ほら早く」

まさか好きと言うことを急かされるとは思ってもみなかった。
抱きしめつつ、片方の手で強引に顎を引き寄せられ、見つめ合う形になる。逸らしたいのは山々だが、とてもそれを許してくれるような状況ではない。
彼女は仕方なく呼吸を整え、言葉を繋ぐ決心をした。

「す、好きだよ?」
「聞こえない」
「言った直後にそれを言う辺り聞こえてない?」
「あ、ごめん。好きすぎて殺してしまいそう」
「あーもうほら!薫くん、大好きだよ!」

やけくその様にそう言い放てば、抱きしめる力が更に強くなったので、やはり死ぬのだと瑞希は悟った。
それでも、相原の腰へ手を回して、抱きしめ返す。
そんな彼女に、彼は笑った。とてもいい笑顔である。

「俺もだよ」

わざとらしく耳元で囁く声に、ときめきつつも何故好きになったのか自問自答する運命なのであった。



おしまい。
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