コンビニの彼


バイト服に着替えたあたしがレジに現れても、それには全く気付かない猿。


そんなにも、手帳の子が気になるか。




「ねぇ史枝。あいつ今日は店内にいるよ」

と、品だしをしていた早田が空になったケースを片手にあたしの方にやって来た。



何故か早田とはシフトが重なることが多い。

まぁ、それもそうか。

お互い学生同士。バイトする時間は大体夕方から夜に限られてしまう。



「そうだね」

あたしは照明に照らされキラキラと光を放つ猿の頭を見つめながら言った。




「その、…この間は大丈夫だった?」

「この間?」

「史枝、あいつに連れられて外に出てったじゃん」

「ああ、あれか」

「何か変なことされなかった?」

「うん、大丈夫」


変なことはされなかったけど、…変な頼み事はされた…。



「そっか、それは良かった。何かあったら俺に言ってよ、力になるから!」

ガッツポーズをする早田の言葉にあたしはあまり期待が持てなかったが、少し引き攣った笑顔で頷いた。




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