コンビニの彼
◆手帳のあの子
待ち伏せ
「結局、昨日も現れなかったんだ〜。手帳の少女」
「ふぅ〜ん、何だか大変そうね」
昼休み−−
あたしは真須美の机に頬杖をついて、昨日の報告をした。
あれから2時間は粘ったが、少女は現れなかったのだ。
真須美はあたしの報告には全く興味がないようで、机に広げたプリントから目を離さずに言った。
「手帳はうちのコンビニの入口前で拾ったんだって。だから少女が来るのを熱心に待ってるってわけよ、あの猿は」
「ふぅ〜ん、何だか大変そうね」
真須美はさっきと同じ台詞を零した。
真須美が見ているのは今月末にあるテスト範囲のプリント。
あたしも真須美みたいに本当は勉強しなくちゃいけない立場なのに、何だか身が入らない。
やる気が起きない。
こんなだから毎回ジュースを奢るハメになるんだってことは分かってるんだけどね…。
「一応頼みを聞き入れたわけだから、協力したいとは思ってるんだけど……その本人が現れないことには協力しようがないっていうか……」
あたしはハァ〜、とため息をついた。
「あんた達バカね」
すると真須美がプリントから顔を上げて、呆れた様子で言った。
「現れないんだったら直接渡しに行けばいいじゃない」
あ…!
「手帳にその子の住所くらい載ってるんでしょ?その子ん家には行けなくても、学校ぐらいは行けるでしょ」
…確かに、この調子で待ってても少女が現れる保証はない。
だったら、直接会ってしまえばコンビニで会うより不自然じゃないかもしれない。
何でそんな事も思いつかなかったんだろう。