コンビニの彼
「あんた、本当にこの子探す気あるの?」
あたしはポケットから手帳を出し、猿の目の前で広げた。
「……。」
猿は何も言わなかったが、手帳に向けていた目線をさりげなく地面に移した。
「あたし、いい考えを思い付いたんだ」
あたしはニコッと笑い、さっき真須美に聞いた話をした。
「…マジかよ…」
猿は罰が悪そうに顔を歪めた。
「大マジ。
そうすれば、わざわざここで待たなくてもいいわけじゃん。
『あなたの手帳を拾ったので学校を調べて届けに来ました』
って言えば不自然じゃないでしょ?」
「…って言ってもな〜…。そう簡単に心の準備が出来るわけねぇじゃん…」
猿は照れ隠しなのか、自分の赤くなった頬を人差し指で掻いた。
何が心の準備だ!乙女猿め!
さっきまでの態度はどうした!
あたしは差し出していた手帳を、ズイッと猿の胸に押し付けるようにさらに前に出した。
「手帳はあたしが返してあげる。だから報酬はしっかりしてよね!」
あたしは左手の親指と人差し指をくっつけてOKサインを作って言った。
猿は何やら考えてる様子だったが、意を決したのか、差し出された手帳を静かな動作でしっかりと掴んだ。