コンビニの彼
猿は黒いTシャツにジーンズという格好で、首元にはシルバーのネックレス。
耳にはいつも通りたくさんのピアスをしている。
そして少し気合いを入れたのか、金髪の髪をワックスで固めている。
髪、ピアス、ネックレスがそれぞれ違う色の光を放っていた。
そして、いつものスウェット姿ではないからか、猿がいつもより格好よく見えた。
あたしとの距離が5Mくらいになって、やっと猿はこちらに気付いた。
「ああ、お前か」
あたしを捉えた猿の目が一瞬静止した。そして素っ気なく前に向き直り、そう言った。
「何よ、その言い方。偉そうに」
「時間前に着いたじゃねぇか」
「それはこっちのセリフ!あたしはあんたの方が遅れてくると思ったわよ!」
「オレは約束は破らねぇよ」
猿は小ばかにしたような目をあたしに向け、ニヤリと笑った。
あたしは猿の態度にムカッときたが、猿の態度の悪さは今に始まったことではない。
「どうせこの子と会うのに緊張して早く着いただけでしょ」
「うっせぇな!違ぇよ!」
さりげなく言ったセリフに猿はホームに響くほどの声で怒鳴って反論した。
…分かりやすい奴…。