コンビニの彼
「校門前で待ってみる?」
バスの一番後ろに間隔を空けて座るあたしと猿。
窓側に座った猿は流れる外の景色を見ている。
「それじゃ明らかに怪しまれるだろ。見知らぬオトナが2人、立ってたらよ」
…オトナ…ね。
「じゃ、少し離れたところで見張ってみようか。あんた手帳持ってる」
猿は無言であたしに手帳を渡す。
あたしは手帳を開いて、
「よく顔を覚えておかないと、間違っちゃアウトね」
まじまじと少女の写真を見つめた。
くりくりとした大きな目に小さい顔。
綺麗に揃えられた前髪に、艶やかな栗色の髪の毛。
写真を見る限りではとても大人しそうで、守ってあげたいという気持ちにさせる雰囲気があった。
「じゃ、手帳はあたしが持つってことでいいわね?」
「…ああ」
猿がぶっきらぼうな返事をする。
そしてバスのアナウンスが少女の学校前の停留所名を告げた。
それを聞くなり猿が停車ボタンを押した。