杉浦くんの手と私の手。
あやちゃんもなっちゃんも心配そうに私を見ていた。


それがすごく不快でたまらない。


だから逃げ出した。


私は心配してもらうような人間じゃない。


杉浦くんは私の両手を離す。


私はもう逃げなかった。


杉浦くんは大丈夫。


哀れみも心配もしていない。


杉浦くんはただ、受け入れてなだめてくれるだけ。


だから大丈夫。逃げなくて良いんだ。


私の頬を何筋も涙がつたう。


杉浦くんは私の頬を優しく拭いながら言った。


「どうした?俺に言ってみろよ」


『話してくれなきゃわかんねーよ』


私はコクコクと頭を縦にふった。


そして杉浦くんに右手の甲を見せた。
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