杉浦くんの手と私の手。
他人の心の声が聞こえる。


父親に殴られるたびに聞こえる心の声。


耳をどんなに塞いでも心の奥底まで響く声。


性的虐待よりも暴行されることよりも、辛くて気が狂いそうだった。


それがどれだけ辛かったか、きっと誰も分かりはしない。


心の声が聞こえることを、今まで誰にも話したことはなかった。


でも、きっと私はずっと誰かに話したかったんだ。


ただ聞いて欲しかった。


そしてこの秘密を一緒に抱えて欲しかった。


私一人には抱えきれない秘密。


私が杉浦くんに話したのは杉浦くんを信用してるからだ。


頼りにしてる。


きっと誰にもバラさず私たちだけの秘密にしてくれる。
< 58 / 61 >

この作品をシェア

pagetop