杉浦くんの手と私の手。
杉浦くんは涙を一粒だけ流した私の目を見て、両手で私の髪をぐしゃぐしゃっとしたあと数歩下がった。


そして私に片手を差し出して言った。


「ほら、キヨ。帰ろうぜ」


杉浦くんはいつも明るくて優しくて笑ってる。



私はそんな杉浦くんを見るたびに幸せをもらってた。


でも今、わかったことがある。


私は杉浦くんの手に自分の手を伸ばした。


すると杉浦くんは私が杉浦くんの手をとる前に、私の手をつかんで思いっきり引っ張った。


「わわっ!」


「ブハッ!変な声!」


杉浦くんは意地悪な顔で笑って見せると、そのまま私の手を握ったまま屋上の出口の方にゆっくり歩いていく。


私は手を引かれながら、繋いだままの手を見つめる。


私は杉浦くんの明るさや優しさや笑顔よりも、杉浦くんの手で幸せになれる。


杉浦くんの手が何より私を幸せにしてくれる。


私にとって杉浦くんの手はヒーローだよ。
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