休日
つんと服を引っ張ってみても起きる様子がないので、息を詰めてそっと手を伸ばした。
片手は背中、もう片方を膝裏に差し込んで抱き上げる。
思った以上に軽い小さな体は、くったりと弛緩したまま、健やかな寝息を立て続けている。
「ふぅー…」
詰めていた息を吐きだす。
起こしてはならないと、何故か必要以上に緊張していた。
「よっ…しょ、と」
抱き上げたときと同じくそっとベッドに横たえさせ、顔にかかった髪を払ってやる。
薄暗いながらも僅かに洩れてくる光が穏やかな寝顔をさらす。子どものようだ。
愛しさからのイタズラ心で頬を撫でてもつついても、ちっとも目を開ける気配がない。
触れる程度に唇を触れ合わせても、普段は真っ赤に染まるはずの頬も、潤む瞳も、今はなんの反応もしてくれない。
これはかなりの熟睡らしい。
ちょっとさみしいな。さっきのこの子もこんな気持ちだったのかもしれない。
夢うつつに聞こえていた、俺の名を呼ぶ声を思い出し、悪かったかと罪悪感を感じた。今日はとても久しぶりに、2人とも休日だった。
いくら眠かったとはいえ、せっかく家にまで来てくれたのに。
「…ごめん」
小さく謝ってみても、その子にはとても聞こえない声だった。
「…次は、つきあうから」
もう今日は、 また寝てしまおう。
腕の中の子が起きてびっくりするまで。
そっと、ぎゅっと抱き寄せて、さっきまでいた、でももっとあたたかくなった暗闇へと戻った。