君に咲く花火
「妙子さんとこへか?」

ビールを飲むのも忘れて、お父さんは目を丸くして尋ねた。

「うん。叔母さんのとこ、子供がいなくって寂しいんだってさ。だから、少し遊びに行こうかなーって」

なんでもないふうに、私もエビフライをかじりながら言った。

お父さんは輸入雑貨店を経営している。
いくつか支店もあって、忙しいみたい。
海外には詳しいから気をつけなくちゃ。

「んー・・・。しかし、なぁ・・・」

そう言いながら、お父さんは台所にいるお母さんに目をやる。
助け舟を求めているんだろう。

「ちょっとだけだし、いいじゃん」

「でもなぁ・・・。妙子さんとこって長崎だろう?実羽ひとりじゃなぁ」

「大丈夫だって。新幹線ですぐじゃん」
実際は4時間くらいかかるらしいけど。
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