君に咲く花火
へぇ・・・、と渡辺社長を改めて見る。

50近いだろうその顔は、日焼けで真っ黒。
アゴひげは、白髪が混じっている。

来ている服はアロハみたいに見えて、なんだか陽気な印象。

「お姉ちゃんは、サムイ島に来てすぐにこの仕事をはじめたの?」

自分のデスクに座って、パソコンのスイッチを入れたお姉ちゃんに聞く。

「ううん。なんにも考えずにこっち来ちゃったでしょう? はじめはここにあるスーパーのレジをやってたの。でも、時給が考えられないくらい安くってね。寮に住んでたんだけど、言葉も通じないからストレスばっかりで・・・」

つらい話のはずなのに、なつかしむような優しい目でお姉ちゃんが言った。

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