君に咲く花火
「なんや?」

中央にある小さなベンチに座りながら、由衣さんが私を見上げた。

私は立ったままで、ため息ひとつ。

「私、なぜか泣けないんです。ほんと、最後に泣いたのがいつなのかわからないくらい。友達と映画を観に行って、みんなが号泣してるのに私だけ冷静、みたいな」

「へぇ。果凛ちゃんとは大違いやな」

「そう。私の分の涙まで、全部お姉ちゃんが持っていったんじゃないかって思うくらい。だから、お姉ちゃんがうらやましくもあるし・・・ちょっと嫉妬しちゃうんですよね」

なんで私、正直に話しているんだろう?
リゾートの解放感からなのか、それとも、ずっと誰かに聞いてもらいたかったのかな・・・。

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