君に咲く花火
「暑いですねー」

「ほんとだねぇ。今日は特に暑いね」

まるで近所の主婦が交わしているような会話。

「どうしたんですか、今日は」

渡辺社長が立ち止ったのでそう尋ねた。

「もうひとつの会社に移動中。やっぱバイクを使えば良かったよ。実羽ちゃんは?」

「ちょっとウィンドウショッピングでも、って」

声には出さずに、ほう、という口をした渡辺社長が急にマジメな顔をする。

「このあたりはぼったくりが多いから、きちんと値段交渉するんだよ。だいたい、最初に言った値段の半分にはなるから」

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