君に咲く花火
ひときわ大きな音と、光が部屋を照らした。
これで最後の花火だったのだろう。

街は夜の景色に戻った。

「日本ではね、夏に花火大会やるの。私の住んでいるとこでは、3万発も花火あがるんだよ」

「ウソよくない、実羽。3万、多い」

おどけて両手をひろげるソムチャイ。

「ウソじゃないって。ほんとにそれくらいあがるんだって!」

「へぇ・・・」

ソムチャイが目をまんまるにして驚いている。

「見てみたいなぁ・・・。いつか、日本の花火」

おだやかな目で遠くに視線をやる。


まるで遠くにある日本を見ているように。
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