君に咲く花火
ソムチャイの左手が布団から伸びた。

その手をにぎる。
しっかりと。

「どうして?」

言葉がこぼれた。

「なに?」

少しこっちに顔を向けてソムチャイが微笑む。

「どうして、言ってくれなかったの? 私、ソムチャイと海に行ったりビッグブッダに行ったり、無理させたよね。言ってくれれば・・・」

ソムチャイは目を細めて、首をゆっくりと横に振った。

「実羽、無理ちがうよ」

「でも、でも・・・。私を助けに来てくれたときだって、ほんとは具合悪かったんでしょう?」

“風邪ひいた”
“肺炎になった”

ぜんぶ、信じてた。
だって、まさか重い病気なんて思わないよ。
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