君に咲く花火
「実羽、怖がらないで」

くぐもった声。

「ムリ、ムリだよぅ・・・。やっと会えたのに、やっとめぐり逢えたのに」

その時、鼻の奥がツーンとした。
もやもやとした気持ちがお腹のあたりからこみあげてくる。

それはジーンと温かいもの。

・・・もしかして、涙?

はじめての感覚に戸惑っていると、ふとソムチャイの体が離れた。

「実羽。大丈夫、全部マイペンライよ」

その言い方が、あまりにもいつも通りで、こみあげてきた涙は潮が引くように消えてゆく。

「もう、今度こそマイペンライじゃすまないんだからね」

なんとなくいつもの調子を取り返した私が、くちびるをとがらせた。

「そう?」

いたずらっぽく笑ったソムチャイが、再びベッドに横になった。

「もう満足。夢、かなう。想い残しないね」
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