君に咲く花火
お姉ちゃんは、私を力なく見ると、
「・・・それ、キレイ」
と独り言みたいに言った。

「え?」

視線の先は私の首からぶら下がったネックレス。

「ああ・・・これ?」

「うん」

「キレイだね・・・。ソムチャイがくれたの」

あの時は・・・。

こんなことになるなんて思ってなかった。

「実羽ちゃん」

ソムサックが私に声をかけた。

「今日はホテルに帰ろう」

・・・帰ろう。

その言葉に胸が熱くなった。

“行こう”じゃなくって、“帰ろう”。

これまで、お客さんだった私が、サムイ島にとけこんでいるようでうれしい。

でも・・・。

帰る場所に、ソムチャイはいない。

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