君に咲く花火
「どうすんのよ」
お母さんは繰り返す。

「・・・行くしかないっしょ」

「は?」

お母さんの“は?”は、聞くたびに心底怖い。
元ヤンっていうお姉ちゃんの想像も、あながち間違ってないかも。

「だってさ、緊急事態って書いてるしさ・・・」

手紙のその部分を指でさす。 

「あの子の言うことなんてあてにしないの。それに、お父さんはどうするのよ」

「それなんだよねぇ・・・」

お姉ちゃんがタイという国に住みだしてから3年が過ぎる。

もともと、高校の卒業旅行でタイに行ったお姉ちゃんは、その国のサムイ島という場所に魅せられたそうだ。

決まっていた就職も蹴り、両親の反対を押し切って、なかば家出のように日本から旅立って行った。
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