君に咲く花火
まだ、信じられなかった。

お姉ちゃんがタイに行ってしまったのだって、はじめのうちは『そのうち戻るだろう』と誰もが思っていた。
気が弱くて、泣き虫のお姉ちゃんに海外暮らしが合うわけがない、って。

だけど、あれからもう3年もたっちゃったんだよな。
このタイミングでの結婚宣言。

予想もつかないことばかり。

「実羽、私だって信じられないの」

お姉ちゃんが、グラスのストローを回しながら言う。

「なにが?」

しばらく黙ったまま、お姉ちゃんは言葉を探しているようだったが、やがて私を見た。

「このサムイって島はね、本当にいいところなの。はじめて来た瞬間から一目ぼれしたみたいになってね。でも、一目ぼれじゃなかった。知れば知るほど、どんどんこの島が好きになっていくの」

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