君に咲く花火
黙ったまま私はお姉ちゃんの次の言葉を待った。

「楽しいことばかりじゃないよ。物価が安い分、給料だって安いしね。でも、本当にしたいことをして生活できている、っていう実感はあるのよ」

「うん、なんかわかる」

お姉ちゃんが生き生きしているのは、日頃のLINEやメールで伝わってきていたから。

「ソムサックとは、ここに来てすぐに出会ったの。はじめは友達として。彼、やさしい人だから、すごく助けてくれてね。・・・気づいたときには好きになってたの」

なつかしむような目をして微笑むお姉ちゃんを、私は綺麗だと思った。

日本にいたころに比べて、化粧っ気もないし、髪も日光のせいか茶色っぽくなってるし、肌も真っ黒。


だけど、なんだか生命の美しさを見るように、それは美しかった。

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