Ｄear...

プロローグ

「ゆずなちゃん。前から好きでした。よければ付き合って下さい」

男は深々と頭を下げる。
あたしはこの人の性格どころか名前すら知らない。
何であたしの事何もわかってないのにそんな事簡単に言えるんだろ？


「ゴメンなさい」



「即答ですか？」


「即答です」


あたしが考えるそぶりすら見せていない事にびっくりしてるようだった。


「友達からでも？」


「あたしは中途半端な関係が嫌いなのっ。付き合うなら付き合う。友達から何て言葉はあたしの中に存在しないのっ」


我ながら
ひどい事を言うと思う。


男は
肩を落としあたしに背を向けて弱々しく歩き出す。


“ゴメンなさい”


心の中でそう呟く。


あたしはその場から一歩も動かずに男の背中を見送る。


あたしの視界から消える寸前で男は立ち止まりあたしの方に首だけ向け冷たく言い放った。



「お前って人を好きになった事あるの？」