Dear...
あたしの体はいとも簡単に持ち上げられた。
「怪我ない?」
あたしの耳にその人の声は届かない。
じっと顔を見つめたまま目を離す事が出来ない。
キレイな瞳。
この人と目を合わせている不思議と自分の中身を見られているような気がした。
スゴいあったかい優しい目。
今まで見て来た男の人の目とは全く違う。
「どうかした?顔になんか付いてるか?」
あたしは首を横に振った。
「そうか」
そう言い残すと
あたしの手を離し3年生の廊下へと消えていった。
あたしは
その場からなかなか動けずにもういないその人の後ろ姿をずっと目で追い掛けた。
不思議な男。
それがあたしの第一印象だった。