*悪役オムニバス*【短編集】
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「なんだい、これは」
魔法使いは目を瞬かせるばかりだった。
樹海の入り口とも呼べる薄暗い森の北端に、黒い袋に詰められた死体があった。
白雪姫、のはずだが、その袋の中から出て来たのは、まるで男のような顔をした少女であった。
貴公子さながらの服を身に纏い、茶髪を首ともでひとつくくっている。
さらに眉は太く、目は切れ長で、なかなか凛とした死に顔だ。
しかし淡雪のように白い肌を見るに、この少女が白雪姫にちがいない。
とても女とは思えないが、胸に触れてみれば微かに膨らみがあり、男としてあるべきものもなかった。
「白雪の王子さま、の間違いじゃないかねえ」
魔法使いは腕を組んで、白雪姫の身体を抱き上げた。
筋肉がついているせいか、それとも背が高いせいか、白雪姫はやけに重い。
魔法使いは白雪姫を抱き上げて、そのまま自分の家へと連れ帰った。
女らしくはないが、体つきが男に近ければ、少なくとも女以上の働きはできるだろう。