*悪役オムニバス*【短編集】
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小さな城の、小さな地下牢。
だが小ぶりと言えど、やはり牢に変わりはない。
階段を降りるほどに闇は深くなり、ぽつぽつと廊下を照らす灯篭ばかりが、やけに鮮明に光っている。
ユキノは久しぶりに、王家の嫡男さながらの服を着た。
いいや……着せられたのである。
王家の者らしくしろと。
そんな簡素な服はみっともないと。
魔法使いと暮らしていた家できていた服は、侍女たちに取り上げられてしまった。
(ごめんよ、魔法使い……!)
無事で。
どうか無事ていてくれよ。
ユキノは強く願いながら、地下牢の階段をおりて行った。