*悪役オムニバス*【短編集】
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そして、今に至る。
世闇の中でぼうぼうと不気味に光る灯篭の灯りが、兵舎の中を灯している。
兵舎は厚い壁で隔てられた檜製の個室で、隷属の民が逃げられぬようにするためか、部屋には鍵までついていた。
「いや……」
サナは涙目で、真上にいる少年に懇願した。
「やめて……」
懇願するが、少年は聞く気などないらしく、冷徹に、布団に押し倒されたサナを見下ろしただけであった。
覚悟は決めたつもりだった。
だが、サナはまだ十八ばかりの少女である。
しかも生娘なだけに、土壇場で処女を失うことへの恐怖が溢れ出た。
それでも少年にやめる兆しは見えない。
“大陸軍の兵士に慈悲なし”
そう言われているだけに、ここの傭兵たちは皆、自身の欲望だけが満たされればよいようであった。
少年の膝が、サナの脚を割って入る。
装束の裾にごつい指を引っ掛け、するり、と外側に開けた。
発育の良い少女の身体が露わになった。
「う」
思わず胸元を隠そうと腕を動かすサナだが、すかさず少年の手がそれを阻止する。
鋭利な爪が生え揃った、怪物のような手だった。
「黙れよ」
少年は冷たくそう言い放ち、あいた方の手をサナの滑らかな肌に当てた。
悲鳴が出るのをこらえる。
その怪物のような手は、ぎこちなくサナの肢体を撫でた。
サナは震撼するも、おぞましさと恐怖で身をよじることもできない。
とうとうその手は、果てに少女の胸の膨らみへと到達し、ぎゅう、とそれを握った。
「痛っ」
サナは声を漏らし、かたく目をつむる。
強弱をつけて胸を握った手は、その後も胸元を這い回る。
その時、不意に強い刺激が少女を襲った。
「ふ、うっ……あ」
つままれるような感覚だった。
抑えきれず声をこぼした。
それを何度も繰り返され、少女は頭がおかしくなりそうだった。