*悪役オムニバス*【短編集】
【3】*鬼ノ子ヨワムシ*
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その女が“鬼”と出会ったのは、ネオンが街を彩る表街の道だった。
「こんな家、こっちから願い下げだっつーんだよ‼︎」
まだ高校生の女は、夜な夜なネオン街を歩き回っていることを、親に咎められた。
しかし、女は反抗期真っ只中だけに、猛烈に反発すると、濃い化粧をしてネオン街へと出て行ったのだった。
妖光を放つネオン街で、女は露出の多い服装でずかずかと歩いていた。
そこで、奇妙な男を見つけたのである。
まばゆい金髪に黒い肌。
耳には幾つものピアスをつけており、いかにも物騒な面差しの男である。
明らかに染髪したと思わしい金髪とピアスがなければ、少し男前なサラリーマンに見えなくもない。
タバコの煙を盛大に吐き出した男は、見るからに獰猛な獣のようであった。
ーーー面白そうなオトコ。
それが女の第一印象だった。
「ねえ、お兄さん?」
女は、瞼を伏せて煙を蒸す男に歩み寄る。
妖艶な声を出して、肌を垣間見せ。
すると男は、ふうわりと目を開いた。
翡翠のような、淡い翠の瞳だった。
「あ?」
男は、町の不良さながらにつぶやき、女を見下ろした。
しかし女は恐れというものを知らない。
「変わった目の色ね。
ハーフ?」
問いかけると、男は自分の目に触れて、しばし黙り込んだ。
「……まあ、人じゃねえからな」
「なにそれ、人じゃない?
ちょーウケる!
人じゃなかったらなんなの?」
けたけたと女は笑う。
普通であれば男は気を悪くするところだが、怒り出すどころか、男は卑屈な引き笑いをこぼした。
「鬼だ」