*悪役オムニバス*【短編集】
「いかにも教養のなさそうなギャルには、わかんねえだろうがな」
「馬鹿にしてんの?
あたし化粧は濃いけど、通ってんのは底辺校の一個上だよ?」
「変わんねえだろ」
ほくそ微笑み、男はスーツのネクタイを締めた。
普段であれば、遊んだ男とは話をしたりはしない。
情事をするためだけの関係だったのだから、会話など必要なかった。
しかし男の奇妙な言葉や聞きなれない用語を耳にすると、他愛のない会話も、まるで非日常のことのように感じられた。
学校でも家の外でも、遊んでいる時でさえ聞けないようなことを、この男は聞かせてくれる。
つくづく、飽きない男だ。
女は鬼であると言う男に期待した。
女は飽きっぽい性格なだけに、いちど遊んだ男とはそれきりになることが多い。
しかしこの男とは、また遊んでみたくなった。
「ねえ、またいつか遊ばない?
なんか気に入っちゃったんだよね」
女は濡れた声で言う。
豊満な身体をちらつかせながら。
夜のネオン街。
それがこの夜から、女と鬼の逢瀬となった。