*悪役オムニバス*【短編集】
外はなんて素敵なんだろう。
こんないい所に、なぜ彼らは、嶺子を連れ出してくれなかったんだろう。
行きかう人々が寒さに身を震わせる中、嶺子はひとり舞い上がって、薄着のまま街を走った。
外はとても広い。
自分がいた大きな部屋なんかよりも、ずっと広い。
心細さなどなかった。
誰にも縛られない、何処へでもいけるような万能感に、嶺子は酔いしれた。
ーーーそうだ、さっき窓からみた公園に行こう。
あの子供たちの仲間に入れてもらおう。
そして、一緒に遊ぼう。
嶺子は胸を高鳴らせて、北にある小さな公園へと足を運んだ。
窓から見えた子供たちは、白と黒のボールを蹴って遊んでいた。
ずっと、してみたいと思っていた遊びだ。
子供たちとは、「いれて」と頼めば、快く仲間に入れてくれる生き物だと嶺子は思い込んでいた。
なぜなら、どの絵本でも、どのテレビでも、子供たちは基本的に優しい。
次の交差点を左に曲がり、公園の入り口をくぐる。